症例Report
『胸腺腫』
:2023. 9. 17
:
症例
胸腺腫 <日本猫 10歳 未去勢雄>
稟告
くしゃみ、鼻・眼瞼周囲・肛門周囲の皮膚の炎症
レントゲン検査・細胞診
レントゲン検査を実施したところ、前縦隔部に陰影が認められました。
エコー検査では嚢胞状病変として観察されました。細胞診検査では小型リンパ球が多数見られたため、胸腺腫が疑われました。
[レントゲン検査における腫瘍状陰影]
胸腺腫
胸腺腫は猫の前縦隔に発生する腫瘍の中で縦隔型リンパ腫に次いで多い腫瘍です。猫の胸腺腫は多数の嚢胞を形成する嚢胞性胸腺腫が最も多く、特徴的な随伴症状としては全身の落屑、脱毛症、鱗屑などを呈する剥奪性皮膚炎があります。胸部レントゲン検査で偶発的に発見されることも多いですが、活動性・食欲の低下、発熱などの症状がみられることもあります。
外科手術
発熱や皮膚症状を繰り返したため外科手術を実施しました。
[摘出前の腫瘍の外観]
[腫瘍摘出後]
[腫瘍外貌]
病理結果
病理検査では、胸腺腫と診断されました。
術後の経過
胸腺腫に関連した皮膚の炎症は剥脱性皮膚炎と呼ばれ、多くは胸腺腫の外科摘出により改善することが知られています。ヒトでの発生メカニズムとしては、自己反応性にT細胞が皮膚に浸潤することが報告されています。本症例は胸腺摘出前に目の周囲や腹部の脱毛が認められたものの、摘出後数ヶ月で脱毛の改善が認められました。