症例Report
『肝微小血管異形成を疑う症例』
:2023. 1. 5
:阿部
症例
トイプードル 1歳9ヶ月 未去勢オス
近医にて血液検査で肝酵素上昇を指摘され、精査希望で当院受診。
身体検査およびその他の検査
やや痩せ気味だが一般状態は良好。発育不良は認めず。
血液検査にて肝酵素および食前食後の総胆汁酸濃度の上昇を認めた。
レントゲン検査、エコー検査にて肝臓のサイズや構造の異常は認めず。
尿検査も異常は認められなかった。
CT検査
若齢で肝酵素や総胆汁酸の上昇があるため先天性門脈体循環シャントの疑いがあり、さらなる検査としてCT造影検査を行った。
検査結果
明らかなシャント血管(門脈から肝臓を経由せず全身循環に至る異常血管)は認められなかった。
考察
CT造影検査で明らかなシャント血管を認めなかったため先天性門脈体循環シャント(CPSS)の疑いは低く、
また小肝症も認めないことから、本症例は肝微小血管異形成(MVD)が疑われました。
今回は行っていませんが、確定診断には肝臓の病理組織学的検査が必要です。
まとめ
犬と猫の門脈疾患には大きく分けて先天性のものと後天性のものがあり
多いものは先天性疾患、すなわち先天性門脈体循環シャント(CPSS)と微小血管異形成/原発性門脈低形成(MVD/PHPV)である。
本症例はMVDの軽症例と疑いました。
MVDの軽症例では肝酵素上昇を示すのみで臨床症状がないことも多いですが、今後重症例に進行していく可能性もあります。
根本的な治療法はなく肝機能低下に対する対症療法が主となります。
食事前後の総胆汁酸の上昇がある為、食事療法(肝臓用療法食)をお薦めしました。