症例Report
『水頭症(V-Pシャント術)』
:2019. 2. 18
:森
症例
柴 2ヶ月齢 雌
稟告
後肢のふらつき、元気の消失、時折触ると激しく鳴く、とのことで来院された。
一般身体検査
意識状態はやや沈鬱だが、時折過剰な興奮状態となった。また、四肢の固有位置感覚は低下していた。また、両側の腹外方斜視が認められた。また、頭部はドーム状に拡張しているように見受けられた。
超音波検査
泉門より頭部を探査したところ、脳脊髄液(矢印)の著しい増加が認められた。
MRI検査
MRI検査では、脳室(白矢印)の顕著な拡大と、脳実質(黒矢印)の菲薄化が認められた。先天性の水頭症と診断された。
水頭症とは、何らかの原因で脳内の液体(脳脊髄液)過度に貯留してしまうことにより、脳の正常な構造や機能が失われてしまう疾患である。
治療
脳圧降下剤としてグリセリン(静脈点滴または内服)、消炎剤としてプレドニゾロン(皮下注射あるいは内服)による内科的治療を2週間程度試みたが、症状の改善は乏しかった。そのため、鎮静下で、超音波ガイド下で脳脊髄液を少量抜去したところ、症状が軽減したことから、手術適用と判断し、V-Pシャント術を実施した。
V-Pシャント術とは、脳室と腹腔内を短絡させるドレーン管を設置し、脳脊髄液を腹腔内に逃がす経路を作る手術である。
[手術中の様子。術野の上方が頭部、下方が尾部である。術野下方の腹腔内にドレーン管を設置し、皮下を通して術野上方の後頭部付近までドレーン管を通したところ。後頭部には頭蓋骨を穿孔させた開口部が見えている。]
[頭蓋内のドレーン管を設置し、短絡路が完成したところ。脳脊髄液の腹腔内への流出を確認した後、閉創した。]
術後経過
術後約1ヶ月で撮影したCT検査および超音波検査では、ドレーン管の折れ曲りはなく、頭蓋内における脳脊髄液の減少がみられた。
一時的に過敏症状や眼振が出ることはあるが、術後3ヶ月経過した現在も内服(消炎剤、抗てんかん薬、脳圧降下剤)によって良好に維持している。
[術後1ヶ月で撮影したCT像。チューブの折れ曲り等がない様子が伺える。]
[術後1ヶ月で撮影したCT像。脳脊髄液の容積が減少している様子が伺える。]