症例Report
『悪性黒色腫(上顎)』
:2019. 10. 1
:minami
症例
悪性黒色腫(口腔内上顎) 雑種犬 15歳
稟告
少し前から右頬が腫れているのが気になる。元気や食欲は問題ない。
口腔内
身体検査・細胞診・血液検査
口腔内に赤いしこり状の隆起が2箇所認められ、その腫瘤が頬を押して外貌が腫れているように見られたものと考えられた。鎮静下で行なった細胞診では悪性黒色腫が疑われた。血液検査では軽度の腎不全(IRISステージII)が認められた。 悪性黒色腫であった場合、腫瘤のサイズ浸潤程度を立体的に確認すること、その時点での明らかなリンパ節・肺転移が認められないか確認することを目的としてCT検査を実施することとなった。
CT検査
横断面
立体画像
口腔内の腫瘤は上顎奥側から発生し、下顎の骨や顎骨などを巻き込んで眼窩(目の奥)にまで入り込んで浸潤していることが確認された。リンパ節転移や肺転移は認められず、同日行なった病理組織検査において悪性黒色腫と診断された。
手術
眼球摘出も含めた広範囲な切除手術となれば外貌の大きな変化を伴う可能性があること、術後の癒合不全の可能性があることなどを飼い主様に説明した。大型犬での15歳と高齢であるリスクなどを検討した上で、放射線治療もご提案したが手術のご希望があったため、摘出手術を行なった。
経過
口腔内発生の悪性黒色腫は再発・転移性の高い悪性の腫瘍である。有効な化学療法(抗がん剤)などもなく、顎骨も含めた広範囲な摘出手術が必要となることが多い。上顎の奥にできたものは腫瘍の完全摘出が困難となるため、さらに予後が悪くなるとされている。今回の症例では下顎の一部、頬骨および軟口蓋も含めた拡大切除を実施した。退院後は元気・食欲もあり、顔の外貌の変化も最小限で済んだと思われる。今後は再発・転移がないか定期的にチェックし経過を追って行く予定である。
術後2ヶ月外貌
術後2ヶ月外貌