症例Report
『原発性上皮小体機能亢進症』
:2017. 9. 2
:西川
症例
上皮小体腫瘍による原発性上皮小体機能亢進症 <シーズー 11歳 避妊メス>
経過
尿中にシュウ酸カルシウム結晶が長期間出現していたため、血液検査を実施したところ、高カルシウム血症が認められた。
血液検査所見
・カルシウム濃度 :15.8(参照範囲は9.3-12.3)mg/dl
・リン濃度 :2.5(参照範囲は1.9-5.0)mg/dl ・イオン化カルシウム濃度:1.84(参照範囲は1.24-1.56)mmol/L ・intact PTH :30.7(参照範囲は8.0-35.0)pg/ml ・PTH-rp :1以下(参照範囲は0-1.5)pmol/L
超音波検査所見
左頚部、甲状腺付近に低エコー性の結節性病変(約5mm)が認められた。
血液検査所見および超音波所見より、原発性上皮小体機能亢進症が疑われた。
CT検査所見
左側上皮小体の腫大(約6mm)が認められた。
治療
頚部腹側を切開し、腫大した左側の上皮小体を甲状腺と共に摘出した。 ※摘出した組織は病理組織的検査にて、上皮小体腺腫(良性腫瘍)と判明した。
[摘出の様子]
術後の経過
上皮症体摘出の影響で、術後一時的に低カルシウム血症となったが、ビタミンD製剤とカルシウム製剤を投与することによって正常値へと導入し、現在はビタミンD製剤のみで維持し、経過は良好である。
原発性上皮小体機能亢進症とは
原発性上皮小体機能亢進症とは、上皮小体が過剰かつ自律的にパラソルモン(PTH)を分泌することによる疾患です。これにより、骨からカルシウムが動員され、血中カルシウム濃度が上昇します。
症状は、食欲不振や元気消失といった非特異的な症状が多いです。 治療は、異常な上皮小体の切除が第一選択です。 予後は良好ですが、残った上皮小体の萎縮によって低カルシウム血症となることがあり、その場合には投薬によりカルシウム濃度を維持する必要があります。