症例Report
『TPLO 前十字靭帯断裂症』
:2019. 1. 11
:minami
症例
前十字靭帯断裂 雑種犬
稟告
1ヶ月続く左後肢の跛行
身体検査
元気食欲はあり全身状態は良好だが、整形外科学的検査にて体重がかかると膝の部分で前後方向にずれることを示唆する前方引き出し徴候(Cranial Drawer Sign)や脛骨圧迫試験(Tibial Compression Test)が左後肢にて認められた。
レントゲン検査
レントゲン検査では左後肢の脛骨の前方変位およびファットパッドサインの消失が認められ、前十字靭帯の断裂が強く疑われた。
1年前に逆脚の右後肢でも前十字靭帯の断裂が認められ従来のFlo法を実施していたが、体重負荷などの改善が緩徐であったため、飼い主様はTPLO法をご希望されました。
手術(TPLO)
血液検査やレントゲン検査など術前検査での異常は認められず、事前に鎮静下で撮影したレントゲン写真より綿密な計画の下、手術に望みます。関節液の検査でも感染などの所見は認められず、半月板の損傷の有無を確認します。その後、特殊なソー(ノコギリ)にて脛骨(下腿の骨)の頭尾側を円形に切断し、骨片を回転させて専用のプレートにて再度固定します。
経過
術後の経過は非常に良く、筋肉量が戻ってくるまで10日ほどは違和感があったものの、その後はしっかりとした体重負荷をかけれるようになり、元気に飛び跳ねてしまうのが困るほどだということでした。
TPLO
TPLOは脛骨近位関節面付近の骨切りを行なって脛骨の角度を矯正することにより、下腿の前方へのすべりだし(犬の十字靭帯にかかるストレスの原因の一つ)を除去することができます。 従来の前十字靭帯断裂の手術方法では靭帯の損傷に対してワイヤーや他の靭帯などで補完するものですが、TPLOは膝関節内での不安定性を解消することで関節の痛みや違和感を早期に取り除きます。 また、TPLOは早期に違和感や痛みがなくなることで、運動ができるようになるまでの期間を従来の手術法よりも短縮させることも期待できます。