症例Report
『鼻腺癌』
:2016. 4. 14
:平塚
症例
鼻腺癌 <柴犬 12歳 メス>
稟告
慢性的なくしゃみと鼻血(右鼻のみ)
臨床所見
右鼻からの出血があり、右目の内側がやや腫れていました。
検査結果
慢性鼻炎や鼻腔内腫瘍などを疑い、CT検査及び、鼻腔内の細胞採取を行いました。検査の結果、右鼻腔内に充実性の病変があり、骨が一部融解していました。病理組織学検査及び細胞診の結果、鼻腺癌と診断されました。
鼻腺癌とは
鼻腺癌は鼻腔内腫瘍の中では最も多い腫瘍であり、鼻腔内を占拠するために鼻血やくしゃみ、呼吸のしづらさなどの症状を示すことが多いです。他の臓器に転移することは比較的少ないですが、局所で徐々に増大し、鼻腔から脳へと至れば神経症状を示す場合もあり、また骨を破壊して外に出て来れば顔貌を著しく変えてしまうこともあります。
治療
鼻腺癌の治療方法は主に外科切除か放射線療法となりますが、今回の症例では腫瘍のサイズが大きく、切除が難しかったことから、放射線療法を選択しました。
[照射前CT所見]
右側鼻腔内に充実性の構造が認められ、骨が一部融解しています
[照射後CT所見]
右側鼻腔内にあった構造物が消失し、黒く抜けて見えます
放射線療法とは
放射線療法とは腫瘍の治療方法の一つで、外科切除が難しかったり、抗がん剤の効きにくい腫瘍の場合などに用いられる方法です。高エネルギーの放射線を腫瘍に照射することで腫瘍細胞を死滅させます。狙った場所に照射する必要があるため、照射部位特定のためのCT検査及び、照射中に関しては麻酔が必須になります。現在こちらの治療法を行える施設は大学病院や一部の大病院に限られ、今回の症例に関してもこの治療を行える病院に紹介し、照射を行いました。
その後
週に1回、計4回の放射線治療を行い、照射終了1カ月後に効果判定のCT検査を実施しました。照射前と比較して右鼻腔内の腫瘍の明らかな縮小が認められ、鼻血やくしゃみなどの症状も消失しました。放射線照射の影響で顔の皮膚に脱毛や色素沈着は見られるものの、一般状態は良好で、本人は元気に過ごしています。しかし根治は難しく、腫瘍細胞が残っている可能性があるため、今後は腫瘍の再発に注意していく必要があるでしょう。