症例Report
『肥満細胞腫』
:2016. 6. 19
:平塚
症例
肥満細胞腫 <フレンチブルドッグ 12歳 オス>
稟告
陰嚢のしこり
臨床所見
陰嚢に1.5㎝大の結節を認めました
検査結果
結節に対して針吸引による細胞診を実施したところ、特徴的な顆粒を含む細胞が認められ、肥満細胞腫と診断しました。
肥満細胞腫とは
肥満細胞腫は、皮膚や消化管など多くの臓器に分布する肥満細胞から生じる腫瘍で、犬の皮膚腫瘍の7〜21%がこの肥満細胞腫とされています。他の部位へ転移することも多く、悪性腫瘍としての対応が必要とされています。
治療
肥満細胞腫の治療の第一選択は外科的な切除になります。ただし、今症例では発生場所が陰嚢であったため陰嚢を含む拡大切除を行い、それに伴う皮膚欠損に対し皮弁法を用いました。
[術中写真1]
切除前の結節。周囲に切除ライン設定のための印があります。
[術中写真2]
結節切除後。大きな皮膚欠損があります。
[術中写真3]
移植用の皮膚を切り出しています。
[術中写真4]
縫合完了。
その後
肥満細胞腫は良好なマージンを確保して切除を行うことができました。他の部位から移植した皮膚も壊死など起こすことなく順調に生着しました。術後3ヶ月以上経過しておりますが、本人は元気に過ごしています。肥満細胞腫は元々悪性腫瘍としての対応が必要な上、陰嚢に生じる肥満細胞腫は他の皮膚の部位のものに比べ悪性度が高いことが多いため、手術後も今後の再発に十分注意が必要です。
[術後2週間後の術創]
皮膚の脱落などもなく、きれいに生着しています。