症例Report
『水和髄核逸脱症』
:2019. 7. 31
:minami
症例
水和髄核逸脱症 トイプードル 8歳♂
稟告
急性の四肢麻痺 呼吸速拍
身体検査・血液検査・レントゲン検査
意識状態に異常は認められないものの、四肢はつっぱったままの強直性の麻痺を呈し、呼吸は速拍し酸素飽和度の低下が認められた。血液検査および胸部・頚胸椎レントゲン検査では特に異常は認められなかった。
MRI検査
T2強調画像
T1強調画像
MRI検査にてC4−5椎間にて軽度〜中程度の脊髄圧迫所見が認められ、圧迫物質はT2強調画像での高信号、T1強調画像での低信号を示し造影剤による増強は不均一で水和髄核逸脱症が疑われた。
飼い主様と相談し、手術を実施することとなった。
手術(ベントラルスロット)
手術は頸部腹側(のど側)から頚椎の脊髄へアプローチする“ベントラルスロット”と呼ばれる手技を用いて頸部椎体への手術を実施した。頸部の椎間板ヘルニアなどで行われる手術方法と同様である。
経過
術後翌日から呼吸状態は改善した。四肢の強直も改善傾向であり痛覚にも問題は認められなかった。ご自宅でのリハビリも行っていただきながら、現在術後3ヵ月時点でようやく少し歩行出来る程度に回復してきた。水和髄核逸脱症はここ数年で報告されはじめた椎間板ヘルニアの新しい病態である。報告では水和髄核逸脱症の子では手術後早期に歩行可能になることが多いとされているが、本症例では発症時に脊髄に起きた障害の程度が強かったのかと考察している。今後もリハビリを行っていきながら、より快適な生活になっていけるよう願うばかりです。